鏡を見るたび、ため息が出るようになったのはいつからだっただろうか。以前は気にも留めなかった分け目の地肌が、最近やけに目につく。シャンプーの後の排水溝に溜まる抜け毛の量も、心なしか増えた気がする。初めは「気のせい」「疲れているだけ」と自分に言い聞かせていたけれど、友人との集合写真で、自分の頭頂部だけが薄く写っているのを見てしまった時、いよいよ現実から目を背けられなくなった。これが、私がFAGA(女性男性型脱毛症)の治療へ一歩踏み出すことになったきっかけだ。インターネットで「女性 薄毛」「分け目 目立つ」といったキーワードで検索すると、FAGAという言葉が目に飛び込んできた。その症状は、まさに私の悩みに当てはまるものばかり。遺伝やホルモンバランスが関係していると知り、自分ではどうにもできないのかもしれないという不安と、でも何とかしたいという焦りが入り混じった複雑な気持ちになった。市販の育毛剤やシャンプーを試してみたけれど、効果は実感できず、時間だけが過ぎていく。そんな時、同じようにFAGAで悩んでいた知人がクリニックで治療を受けて改善したという話を聞いた。彼女の「もっと早く相談すればよかった」という言葉に背中を押され、私も専門のクリニックを受診することを決意した。予約の電話をするだけでも緊張したが、受付の方の優しい対応に少しホッとしたのを覚えている。初診の日、医師は私の話をじっくりと聞いてくれ、頭皮の状態をマイクロスコープで詳しく診てくれた。そして、「FAGAの初期段階ですね。でも、早く気づいて来られたので、これからしっかり治療していけば改善の可能性は十分にありますよ」と言ってくれた。その言葉に、どれだけ救われたことか。治療法としては、ミノキシジルの外用薬と、内服薬、そして生活習慣の改善を提案された。費用や副作用についても丁寧に説明を受け、不安な点は全て質問することができた。治療を開始して数ヶ月。すぐに劇的な変化があったわけではないけれど、抜け毛が減り、髪に少しハリが出てきたように感じる。何よりも、一人で悩んでいた時のような暗い気持ちがなくなり、前向きに治療に取り組めていることが大きい。FAGA治療への一歩は勇気がいるけれど、専門家を頼ることで道が開けることを、身をもって体験している。