コロナに感染した後、髪が抜けるのはなぜか
新型コロナウイルス感染症から回復した後、数ヶ月経ってから、シャワーやブラッシングの際に、驚くほどの量の髪の毛が抜ける。そんな経験をする人が、世界中で報告されています。これは「コロナ後遺症」の一つとして認識されつつある現象で、医学的には「休止期脱毛症(きゅうしきだつもうしょう)」と呼ばれる状態である可能性が高いと考えられています。私たちの髪の毛は、成長する「成長期」、成長が止まる「退行期」、そして抜け落ちるのを待つ「休止期」というサイクルを繰り返しています。通常、髪全体の約10%がこの休止期にありますが、体に大きな肉体的・精神的ストレスがかかると、ヘアサイクルに異常が生じます。成長期にあるはずの多くの髪の毛が、一斉に強制的に休止期へと移行してしまうのです。そして、その約2〜3ヶ月後、休止期を終えた髪の毛が、新しい髪に押し出される形で、まとまって抜け落ちていきます。これが休止期脱毛症のメカニズムです。新型コロナウイルスへの感染は、まさにこの「大きなストレス」の典型例です。高熱や咳、倦怠感といった肉体的な負担はもちろんのこと、感染したことへの不安や、療養中の孤独感といった精神的なストレスも、私たちの体に大きなダメージを与えます。この強烈なストレスが、ヘアサイクルの司令塔を混乱させ、多くの髪を休止期へと追いやるのです。つまり、コロナ感染後の脱毛は、ウイルスが直接毛根を攻撃した結果ではなく、感染という過酷な体験に対する、体の防御反応や後遺症として現れる現象なのです。そのため、髪が抜け始めるのは、感染の真っ最中ではなく、回復してしばらく経った後、というのが大きな特徴です。このメカニズムを理解することが、不要なパニックを避け、冷静に対処するための第一歩となります。