「最近、前髪がぺたんとして、スタイリングが決まらない」「以前より、おでこが広くなった気がする」。そんな前髪のボリュームダウンは、単なる髪質の変化や老化現象ではなく、女性の薄毛の代表的な症状である「FAGA(女性男性型脱毛症)」が始まっているサインかもしれません。FAGAは、男性のAGA(男性型脱毛症)の女性版とも言える症状ですが、その現れ方には大きな違いがあります。男性のように生え際がM字に後退したり、頭頂部がはっきりと禿げたりすることは稀で、FAGAの多くは、頭部全体の髪が均等に細くなり、密度が低下する「びまん性」の薄毛として進行します。そして、その影響が最も顕著に現れやすい場所の一つが、顔の印象を大きく左右する「前頭部」、つまり前髪なのです。FAGAが進行すると、男性ホルモンの影響によって、髪の毛の成長期が短縮されます。これにより、一本一本の髪が、本来の太さや長さに成長する前に、細く短い産毛のような状態で抜け落ちてしまう「軟毛化」という現象が起こります。この軟毛化が前髪全体で起こることで、髪の密度が低下し、ハリやコシが失われ、結果としてボリュームダウンに繋がるのです。特に、頭頂部から前頭部にかけての分け目部分は、地肌が透けて見えやすくなるため、悩みを自覚するきっかけとなりやすい場所です。このFAGAの主な原因は、加齢、特に更年期に伴う女性ホルモン(エストロゲン)の減少です。髪の成長を支えていたエストロゲンが減ることで、相対的に男性ホルモンの影響が強まり、髪の軟毛化が進んでしまいます。もし、あなたが40代以降で、前髪のボリュームダウンとともに、髪全体のハリ・コシの低下や、分け目の広がりを感じているなら、それはFAGAの可能性を考えるべきサインです。FAGAは進行性であるため、放置すれば症状はゆっくりと悪化していきます。早めに専門のクリニックに相談し、適切な対策を始めることが、豊かな髪を長く保つための鍵となります。